円祭其之十八 大雅堂開廊50周年記念 千住 博  展  ~光を描く~

■作品紹介

ウォーターフォール・オン・カラーズ(Waterfall on Colors)

2022年 112.1×162.1cm

ウォーターフォール・オン・カラーズ (Waterfall on Colors)

2022年 112.1×145.4cm

ウォーターフォール・オン・カラーズ (Waterfall on Colors)

2022年 112.1×145.4cm


■会期

2022年10月27日(木)~11月13日(日) 10:00~18:00(会期中無休)

大雅堂1F・2F展示室

 

作家在廊予定:

■展覧会に向けたコメント

大雅堂個展に寄せて

 

 作品が、世界で通じるコンテンポラリーアートであり、かつ同時に日本画 の新しい歴史を作る、という異なる二つを兼ね備える可能性を模索して来たのが私の画業だった。

 コンテンポラリーアートは、コンテンポラリーの文字通り、いかに新しい かが問われる。類例がない作品を作ることはとても難しいが、それに到達した美術家が美術史を作ってきた。

 だからと言って、新しければ何でもやっていいというわけではない。それでは芸術作品という「これ以上足したり引いたりできない精神の秩序」が成立しない。そして大切なのは、抱え込むストーリーの深さ、リアリティだ。それゆえ、何らかの確固たる意識が美術家たちの心の底には必ず強く存在している。それは体験に加え、歴史観、風土感、宗教観を含み、時にジェンダーや人種問題も抱え込み、多様で個人個人皆違うものだ。つまり作品は、作者の人生の投影に他ならない。どんなに似た人生と思われても、自分と同じ一生を過ごした人はいないからだ。また、私は既成概念を押し広げるべく、時には蛍光 塗料まで用いたし、このシリーズにおいては同じ色は二度は使わない、グラデーションも用いないというルールを設けて多くの色相を対比させた。日本画には開拓されてない無尽蔵の魅力があるといつも感じている。

 

 私と同じように、世界に通じる日本画のあり方を画商としてずっと考えて来たのが大雅堂の庄司惠一会長だったと思う。ご夫妻とは夜遅くまで話すこともあったし、又いろいろな方を紹介していただいたり、京都のさまざまな 場所にも連れて行ってもらった。画廊は子息の雅一氏が社長を継ぎ、今5 0周年を迎えた。1200年を超える長い歴史があり、しかも常に新しいものを受け入れ、生み出し、新陳代謝をしてきた京都という稀有な街ならではの志と優れた感覚を持ち合わせた素晴らしい画商だと思う。

 

 私は、高野山金剛峯寺の障屏画以降、滝の内側から世界を見たら、世界は色彩に満ちていたという発見から、視点を変えて滝を描いている。色彩とは要するに光の作用によって生まれる。だから私は光を描いていると言っていい。光は、森の緑や野菜、果物などの多彩で身近なものの色となって具体的に全ての人の手元に届く。それだけではなく、同時に深く暗い、闇に近い絶望的な森の中も、光がわずかでも到達すれば、世界は数えきれないほどの多様性に満ちているということに気づかせてくれる。そしてそこにも、命を支える水が流れていて欲しい。それがこのウォーターフォール・オン・カラーズというシリー ズだ。この作品は、今という閉塞感に満ちた時代が私に描かせてくれたようなものだと思っている。

 

 今回は、京都という私の出自にも深い縁がある地での個展なので、格別な想いを持ちながら制作した。ロンドンの来年の個展の作品と一緒に制作しているので、世界的同時性の中で生まれた作品でもある。この延長線上に日本画の国際化の未来があると思っている。

 

千住 博

■プロフィール

日本画家。1958年生まれ。東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業。同大学院修了。修了制作藝大買上。

95年ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展名誉賞。成都ビエンナーレ(中国)、光州ビエンナーレ(韓国)に選抜され出品。

MOA岡田茂吉賞大賞、イサム・ノグチ賞、日米特別功労賞、外務大臣表彰、恩賜賞、日本芸術院賞、日米協会金子堅太郎賞特別賞をそれぞれ受賞。

国際的に評価され、メトロポリタン美術館、ブルックリン美術館(ニューヨーク)、ロサンジェルスカウンティ美術館(ロサンジェルス)、国立故宮博物院(台湾)等に常設され、2021年シカゴ美術館「千住博展」は6ヶ月以上の会期延長となり、同館収蔵となる。

国内では軽井沢千住博美術館、山種美術館、佐川美術館をはじめとして、国立国際美術館、富山県美術館、神奈川県立近代美術館、熊本現代美術館、北海道立釧路芸術館、大徳寺聚光院、 薬師寺、高野山金剛峯寺、明治神宮、出雲大社等に収蔵。

京都造形芸術大学学長を勤め、アートインスティテュートオブシカゴ、東京藝大、東大、九州大、横浜国大の講師を歴任。

2022年日本藝術院会員に任命された。現在京都芸術大学教授。



■展覧会風景